蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

サム・ペキンパー監督の「荒野のガンマン」を見て

kawaiimuku2012-06-20



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.260

冒頭、酒場で私刑で縛り首にされそうな男を主人公のガンマンが助けるのだが、じつはこいつがガンマンの頭の皮をはごうとした宿敵で、あとで復讐するために助けてやるという手の込んだシナリオである。

次に酒場で一緒になった都合3人の男たちは銀行強盗に乗り出そうとするのだが、その直前に主人公が誤って踊り子モーリン・オハラ(はじめは処女の如くついでは妖艶な熟女に変身、荒野の水たまりでは強烈なヌードを見せつける!)の息子を撃ち殺してしまう。美しく気丈なオハラは、息子の亡きがらを夫が死んだ墓地に葬るのだといって女一人でゴーストタウンに出発するが、責任を感じたガンマンは他の2人を強要して彼女の護衛に赴く。

映画はこの不倶戴天の男女が次第に惹かれあい、襲いかかるインディアンやならず者どもを退治してハッピーエンデイングに導かれるさまをニルアドミラリに描くのであるが、その表面上の酷薄さこそ、サム・ペキンパーの独壇場なのであるんであるんであった。

タフガイ役のブライアン・キースがとっくの昔に自殺してしまったのに、「わが谷は緑なりき」の女優が91歳で健在なのは、喜ばしい。


男のくせに香水なんかつけてやがる俺に近寄るな近づくとぶっ飛ばすぞ 蝶人