蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦二〇一二年水無月 蝶人狂歌三昧

kawaiimuku2012-06-30

ある晴れた日に 第111回


滑川に平家蛍乱舞す七時半 

玄関になでしこが咲いているのが我が家です。

1ドル79円1ユーロ99円の日本に生きる幸せと不幸せ

横須賀の医科歯科大の校門に僅かに藍しジャカランダの花

イチロー松井松坂海の彼方の末期の花よ 

イシオカがねヨシオカがねヤジマとやったんだってサ 

男のくせに香水なんかつけてやがる俺に近寄るな近づくとぶっ飛ばすぞ

他人の拳銃を捨てさせようと思ったらまず自分が捨てなければならない

君の鳥肌は軽々しく立ち過ぎる

細君と峠の湧水を訪れて手足あるオタマを返しやりけり

ピリオド奏法にすれば音楽の生命が蘇るのかよロジャー・ノリントン

モダーンにて下手な指揮するその男古楽器に替えても下手は変わらず

茣蓙の上で仰向けに往生しており忠犬ハチ公

偶の外出「私これでいい?」と訊ねる妻を可愛ゆしと思う

いきなり誰かに刺されないよう気をつけながら新宿を歩きました

犯人は捕まらなくても構わない防犯カメラは即止めるべし

日本全国防犯カメラ基本的人権肖像権ゼロ

歌も人間も失敗作のほうが味がありますね

日本アカデミー賞の男子より聞きごたえがあったなあAKB女子のスピーチ

寒い朝葉に止まるルリシジミに息を吹く掛ければうれしそうにじっとしていた

皇室を飛び出し障碍者のために働きたかったんだってね髭の殿下逝く六十六歳

髭の殿下御舟入テングチョウとルリシジミ数多生まれた日

これよりは皇族もパンは己で稼ぐべしさなきだに平成の民の貢は日々重ければ

民主党はもう終わりです即解党するか解散総選挙しなさい

太陽を水すましのように泳ぎゆく一匹の黒い天道虫今日の金星

その日金星は一匹の黒い天道虫になって向日葵の花の周りをゆっくり歩いていきました

ディースカウ、畑中、吉田、新藤、偉大な人物がどんどん死んでいくなあ

障碍の息子を持ちて身につけし障碍の子を見つける速さ

耕君のお陰で穂村氏に選ばれました六月三日「日経歌壇」

「じゃあまた」と明るく別れを告げたけど吉田秀和『名曲のたのしみ』

青嵐吉田翁なき雪の下を歩みけり
 
風に向かいて われ歌を放つ 唄をうそぶく

明日を生き抜くために今夜しっかり夢を見ること


今日こそはあえて使う日卯の花腐しといふ言葉  蝶人