蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

「フルトヴェングラー/ザ・レガシー107枚組CD」を聴いて

kawaiimuku2012-09-11



♪音楽千夜一夜 第279回

フルヴェンがかつてベルリンやウイーンのオケに録音した交響曲や管弦楽、オペラ、歌曲をベートーヴェンブラームスワーグナーブルックナーなどの作曲家別に全部で11のボックスにパックして全107枚がなんと9490円也という音質もOKな超廉価盤セットです。

ほぼ半年間にわたってちびちび聴いてまいりましたが、やはり聴きごたえがあるのはベートーヴェンブラームスワーグナーで、ブルックナーはちょっと曲の本質と違う演奏。ワーグナーの「指輪」の全曲は1953年のローマRIA交響楽団とのライブだが、どうしてスカラ座との録音も入れてくれなかったのか不可解だな。


面白いのはモーツアルトのダ・ポンテ・オペラ、チャイコフスキー、それに自作の交響曲とザルツブルク音楽祭でシュワルツコップと入れたピアノの伴奏など。おまけのD?Dにはヨアヒム・カイザーという有名なドイツの音楽評論家のフルヴェン讃が聞かれるが、どこかナチ幹部に似た下品な顔つきのこの男、泡を飛ばして偉大なマエストロをほめちぎるが、どこか信用できない嫌な感じでげす。

全CDを通じてのベストは意外にも1953年5月18日にシュナイダーハン、ベルリンフィルと入れたベートーヴェンのバイオリン協奏曲で、これにはしみじみ涙がちょちょ切れました。


蝉が鳴くお前は去年の蝉ならず 蝶人