「ウラジミール・ホロビッツ・プレイズ・グレートソナタズ」全10枚組を聴いて
♪音楽千夜一夜 第295回
現代の美形若手によるいっけん新しいそうでじつは陳腐な迷演奏の数々を聴いた口直しの手が伸びるのは、いつもこういう大家の大演奏である。
ご存知ソニーの超廉価盤シリーズの中でもホロビッツのベートーヴェン、モザール、スクリャービン、ショパンなどの名演を選りすぐった本選集はとびっきりのお買い得CDセットといえるだろう。
なかでも屈指の名演奏は2枚に収められたスカルラッティの15曲とハイドンの2曲で、これを聴けばリストやラフマニノフやショパン、いなベートーヴェンの「悲愴」や「月光」ですらどうでもよろしい、といいたくなるような軽妙洒脱な演奏である。
いずこにても名人はとく死に絶えチャラチャラ行き来するはしゃらくさい小者のみ 蝶人