周防正行監督の「Shall weダンス?」を見て
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.464
この監督の映画のための素材選びについては定評があるが、サラリーマンと社交ダンスという組み合わせが意表をついて素晴らしい。2004年のリチャード・ギア主演の同名の作品や、2006年製作のリズ・フリードランナー監督の「レッスン!」なども本作から大きな影響を受けている。
配役がズバリ的中している。地味なリーマンの役所広司といわくつきの美しいプロダンサーの草刈民代(初の映画出演!)はもちろんだけれど、脇役の竹中直人、渡辺えり子、田村たま子役の草村礼子、徳井優、田口浩正、原日出子など、いずれもこれ以外にないという個性的な役者を起用している。
いっけん一人前のリーマンがマイホームを購入してローン返済を始めた途端に生きがいを喪失して、そこに謎めいた草刈民代が窓辺にたたずむところからドラマが始まるという設定も心憎い。
冒頭のシェークスピアの言葉(もう忘れたけど)、それまでネグレクトしていた妻とはじめてステップを踏むシーン、英国に旅立つ草刈民代が待ちに待った役所広司とラストダンスを踊るシーン、しかもテーマ曲の「Shall weダンス?」をなんと大貫妙子に歌わせるという選択!
ダンスの素晴らしさと生きるよろこびを、これくらい見事に表現した映画はなかった。ダンス映画というよりは人世映画の大傑作というべきだらう。
泣きながら娘は駅へ走りたり激しく祖父を憎みながら 蝶人