蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

「鎌倉文学館文学散歩」で北鎌倉を歩いて

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茫洋物見遊山記第146回鎌倉ちょっと不思議な物語第313回

 

 

春は名のみの3月中旬に北鎌倉周辺をツアーしました。

 

まずは円覚寺ですが、私はここへ来るといつも同じ禅宗で塔頭がずらずら立ち並ぶ鎌倉五山建長寺と見間違えてしまいます。建長寺には私の伯父のお墓があるのです。

 

今回のハイライトは生誕110年を迎えた映画監督小津安二郎のお墓と、夏目漱石が参禅した帰源院です。名監督のささやかな墓所は、国宝の梵鐘を見上げる場所にあって墓碑には「無」と刻まれ、墓石の前には彼の好物だったお酒や洋酒が並んでいました。

 

ちょっと驚いたのは、彼の墓所の向かいには同じ映画監督の木下恵介が眠っていたこと。偶然の一致にしてはちょっと出来過ぎのようでした。

 

急な坂を登った上にある帰源院はもちろん非公開で入れませんでしたが、漱石が参禅した当時の面影をいまにお伝えるような簡素で閑雅な佇まいを見せていました。

 

次は江戸時代の縁切り寺の東慶寺ですが、ここは以前はもっと鄙びた感じだったのに、入口の右側にモダンなギャラリーだか土産物屋だかが出来てしまってじつに嫌な感じになりました。この近所に小津監督が住んでいたそうですが、個人情報秘匿のためにその場所はもちろん教えてもらえませんでした。

 

最後はこれまた久しぶりの浄智寺でしたが、ここは鎌倉十井の甘露ノ井から流れ出る池には鯉も泳いでいるし、石段も風情があるし、寺域が広いのでぶらぶらそぞろ歩くにはぴったりです。

 

文学館のガイドさんに引率されての半日散歩が終わってちょうどお昼になったので、駅前の門前(看板の字は川端康成)で昼食をとろうと思ったら、いつのまにやらデイケアセンターに変身していたのには驚きました。

 

 

なにゆえにせっせと大根を栽培する市民のための十二所果樹園なのに 蝶人