蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

羽田圭介著「メタモルフォシス」を読んで

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照る日曇る日第724回

 

タイトルの「メタモルフォシス」とそれ以前に書かれた「トーキョーの調教」の2作を収めている。いずれも正真正銘?のSM小説で、実体験?と徹底的現場リサーチを生かした迫真的興奮?を味わえる異色作である。

 

「トーキョーの調教」はテレビ局の男性アナが、自分が講師を務めているアナウンサー養成教室の女子大生に調教を受け、まんまと人生を震撼させられてゆく初期・中期SM段階の心躍る物語であるが、主人公の変態的?欲望が次第に嵩じて、「ボクチャンの乳頭を1個潰してください」と女王様にお願いするあたりで、さすがの私もどうにも付いていけなくなる。

 

芥川賞候補になった「メタモルフォシス」はそれに之繞がついて、奴隷が、死ぬほどの苦痛を味わいながら殺してくらさいとわれらが親しき女王様にお願いするに至る本格的&終末的SM小説で、若い作者がここまで書いたのは立派だが、書かれた世界があまりにも互換性のない特殊な世界に過ぎるので少しく鼻白む。

 

でもここに書かれていることが事実だとすると、夕闇の東博や真夜中の谷中霊園では血沸き肉躍る楽しい野外倒錯プレイが毎日行われているらしい。

 

それはいいとしても、異性から手加減なしに加えられる激烈な肉知的苦痛がどうして至高の快楽に還元されるのか、感受性の鈍い私などがいくら考えても不可解である。

 

 なにゆえに女王様の殴る蹴るがうれしいのそのまま天国へ行けるから 蝶人