蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

キャメロン・クロウ監督の「エリザベスタウン」をみて

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bowyow cine-archives vol.701

 

 冒頭、亡くなった父親の葬儀に出席するためにデルタ航空に乗った主人公が、可愛らしいスッチー(キルスティン・ダンスト)にもうれつアタックを受けて、1時間半ほどやっさもっさするうちにめでたく一緒になる仕合せ映画なり。

 

 乗った飛行機にはなんせお客が彼一人しかいないので、エコノミーからファーストクラスに招待されたりするのだが、ちょうど私が湾岸戦争直前の1990年12月に、NYから香港まで乗ったデルタ航空機も、乗客は私一人、そしてこの映画のヒロインほど可愛らしくはないが、より美しいスッチーが、物思いに耽りながら時折稲光が走る窓の外を見つめていた。

 

 私はもちろんこの映画の主人公のようなうれしい目には遭わなかったが、ずいぶん長い間雲の上で2人きりだったのだから、ああ、あんときゃあこっちから誘えばよかったんだ、と気付いたのは、この映画を見てからのことで、思えば2014引く1990=24年遅かった!

 

 映画の中身はどうでもよくなったが、主人公が父親の骨壷を車で運びながらあちこちでばら撒くのはなかなか素敵だと思った。

 

  なにゆえにアサガオのくせに秋に咲く天青は寒さに強い花だから 蝶人