蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2015年極月蝶人花鳥風月狂歌三昧

f:id:kawaiimuku:20150913081631j:plain

 

ある晴れた日に第356回

 

 

いくら野良犬でも解剖してはいけません綾部高校生物クラブ

 

亡き父と同じ年まで生きたのでもう明日からは楽しき余生

 

時代劇の名悪役として知られたる五味龍太郎静かに逝きたり

 

「ジェジェジェジェ」の賞味期限が尽きたので「びっくりぽん」に乗り換えてます

 

マーリンズ外野の控えに甘んじて鈴木一郎ストーブにあたる

 

てやんでえ消費税などみなやめっちまえ景気などすぐに回復するじゃろ

 

ひむがしの空より谷戸に光差し竜胆の花いま開かんとす

 

いくたびも迷いし末に需めたり十年連用日記既に古稀過ぎたれば

 

古稀過ぎて迷いし末に求めたり博文館の十年日記

 

なにゆえにいくら探しても見つからぬわたくしと天皇を結ぶ一本の糸

 

大丈夫君も僕も地球も太陽も日々滅亡に向かってるから

 

共産党昔は右翼と思いしがこの頃まともなことをいう

 

死に急ぐこととも知らず益荒男はひたすらけなげに生き急ぐなり

 

タイヒラメ美美しく並んでいるけれどとどのつまりは魚の死体

 

イケテルと思いしことが泥まみれ他人事ではないWの悲劇

 

爆買いの中国人の歓声が轟き渡る銀座八丁 

 

吉田翁が推薦されしレコードを師走の銀座で需めしあの頃

 

年の瀬に読みたき記事はただひとつ吉田秀和のお薦めCD

 

妻は子の我は我のみの行く末を案じて眠れぬ寒き夜かな

 

書を捨てて街へ出よと妻は説く寺山修司を知ってか知らずか

 

むざむざと鴉と雀に喰われけり無住の隣家の鈴なりの柿

 

蟷螂の腹より出でし発条にデザインされた舗道を歩む

 

シューベルトの「未完成」を聴きながら思うこといかなる生も未完成なり

 

外出の時は新しい肌着を身につけるいつどこで何があるか分からないので

 

マカ不思議有名人物の名さえついてればただの紙切れが札束に化ける

 

淫行という言葉の妖しさよ生涯に一度くらいは淫行したし

 

熱海にも鎌倉にも支局持つNHKの人の多さよ

 

基督も博士もいない聖夜祭

 

轟々と万物流転す極月尽

 

 

     原節子野坂昭如三津五郎水木米朝鶴見俊輔 蝶人