蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2006年最後のメッセージ


ふあっちょん幻論 第4回


これからブランド・デザインやアパレル・ビジネスの世界に挑戦しようとする人にとって重要なのは「じぶんの志を持つ」ということではないでしょうか。

というのは、世の中に存在する数多くのブランドが、定見にない数多くの人々が少しずつ参加することによって当初は存在した志=主張=存在理由=ブランドコンセプトを雲散霧消させたわけのわからない異様な代物だからです。

私はこれからじぶんの志を持った大小無数の個性的なインデーズ・ブランドがどんどん登場することによって、現在のファッション界の「見せ掛けの飽和状態」と世界の中の「ジャパンブランドの沈滞現象」を打破できるのではないかと心から期待しております。

以前、ムラカミタカシを引き合いに出して成功のお手本にせよといいましたが、すべての若者がムラカミタカシになれるわけではありません。

一人のムラカミタカシの足元には100人、1000人、10000人のムラカミタカシになれなかった人々が累々と横たわっているのです。

しかし最大の勝者になれなかった創造者にも十分に存在価値はあります。また長期にわたるマッチレースにおいてかつての勝者が一瞬にして1敗地にまみれる光景を私たちは何度も見てきました。

「いかにしてファッションでお金儲けするか」とか「いかにして売れる商品を企画し、生産し、販売するのか」

というところからこのブランド作りにアプローチするのではなく、

「自分はどんなファッションを創造したいのか」「自分にはファッションなんて必要なのか」「自分は何のために、誰のためにファッションを企画し、生産し、販売するのか」

という風に、最初の問題を立ち上げてほしいのです。


「絶対売れる商品を開発するんだ」などと称して外国直伝の科学的なマーケティング調査だの超現代的なマーケティング理論を振りかざして登場したブランドの大半が三年以内に絶滅しています。

「じぶんの考えや理想をぜんぶ犠牲にしても、ともかく売れればいいんだ」という悲壮な決意の元で立ち上げたブランドが、売れるどころか在庫の山を築きあげている現状をみれば、むしろその自分独自の考えや理想を鋭く磨き上げる道を、たとえ困難ではあっても選ぶべきではないでしょうか。


毎日のように生まれ、そして死んでいく数多くのブランドたちの中で、この問題意識を本気で内部に抱え込んだファションはほんとうに数少ないのです。


そして世の中に増殖する腐敗し堕落した“あほばかブランド”を、皆さんの手で完膚なきまでに打倒してください。“ふぁっちょんもびじねす”もいまさらながら革命を必要としています。

そういえば中国の悪名高い、しかし偉大な革命家である毛沢東が、「若いこと、貧乏なこと、無名であること、の3つがなければ革命はできない」と名言を吐いていますが、これは時代と国境を超えて正しい。私はさらにもうひとつ「頑強な体力」を付け加えたいと思います。

 (ここから絶叫!)
 若者は、午前10時の太陽です。(これも毛沢東の言葉)。
若い皆さんにはいまだけジコチュウなのではなく、死ぬまでジコチュウを貫いてほしいのです。

不肖私はこの業界で長らく悪あがきしながらほとんど何も寄与できず、間もなくくたばりますが、君たちはどうか「全世界を獲得するために」ぐあんばってくれたまえ。