蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ここで中世のたたら製鉄が行われていた


鎌倉ちょっと不思議な物語30回


「たたら」とは鉄を製錬するために鉄を吹く「ふいご」のことですが、そのふいごを使う古代の製鉄技術全体をたたらと呼んでいます。


たたら製鉄とは日本古来の独自の製鉄法で、千年以上の歴史を誇っています。

最初は古代の九州や出雲地方から始まったといわれますが、鎌倉時代には他ならぬ太刀洗の「鑪ヶ谷」(たたらがや)という名前の低い丘で、中世を代表する製鉄が行われていました。

当時の人々はこの丘の平地を切り開いて山から下る渓流を利用しながら最高1500度の高熱で砂鉄を木炭で焼き素鋼塊(そこうかい)や銑鉄を生産し、日本刀などの原材料として加工していたのです。

たたら製鉄の高度な技術の原型は鎌倉時代に確立され、江戸時代中期に完成しますが、この国産技術をベースにして佐久間象山や江川太郎左衛門などが南蛮渡来の反射炉をつくり黒船来襲に備える大砲を製造したのでしょう。

現場は「鎌倉ちょっと不思議な物語13回」で紹介した「人面石」を登ったところにあります。