蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

少年よ、偉くなるな!


♪バガテル op17

財団法人「日本青少年研究所」の調査では、「偉くなりたい」と思っているわが国の高校生の割合は、米中韓国の3分の1程度の8%だという。

ちなみに中国が34%、韓国23%、米国22%だそうだが、この結果はたいへん結構だと私は思う。

さらに結構なのは、「のんびりと暮らしていきたい」高校生は、わが国が43%と最高。「多少退屈でも平穏な生涯を送りたい」でも最高ポイントの21%、「大きな組織の中で自分の力を発揮したい」では諸国中最低の29%というので、私は実に実に久しぶりにうれしくなった。

他人や他国の人々よりも「己を偉くせよ」、などという、わかったような、しかしまるで訳の分からない無内容な前進教育を、かの聖徳太子の御世から受け続けた結果が、天地天皇と豊臣秀吉による朝鮮侵略であり、飛んでイスタンブール、じゃなかった日清、日露の大戦であり、その結果がすぐる2度の世界大戦である。

黄色い猿のような顔をした(漱石)アジアの孤島の田舎者が、夜郎事大に極東の解放者、などと思い上がり、あまつさえ西欧世界に覇を唱えようとイソップの蛙よろしく愛国的に力みかえる。

いつか来た道をまたぞろ我ら陛下の臣民、屁にこそ死なめと一億3500万こぞりて辿らんとする今日この頃、「偉くなりたくない」「のんびりと暮らしていきたい」若者たちの登場こそは、げに神国ニッポンの未来を照らす唯一の光明である。

日本の青少年よ、偉くなんかなるな! 君たちの父祖が偉くなると、諸国民に迷惑ばかり掛けてきた。