蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

タベルナで食べた

♪バガテルop57&鎌倉ちょっと不思議な物語124回


今日も「イタリアン」の続きです。

海からの薫風に吹かれて極楽寺から稲村ガ崎まで歩いたあとで、タベルナ ロンディーノ(TAVERNA RONDINO)というイタリア料理屋さんで妻とランチをしました。TAVERNAというのは食べるなではなく、イタリア語で「大衆食堂」「田舎風の小洒落たレストラン」という意味です。RONDINOはたしかツバメではなかったでしょうか。ご存知の方は教えてくださいな。

ここはなんでも裏駅の江ノ電改札口の隣、御成商店街のたもとにあるCafe RONDINO のオーナーが1980年に国道134号線沿いに開いたお店だそうで、亡くなった詩人の田村隆一氏がかつてこの近所に住んでいて、よく食事に来たと聞いたので、散歩がてら足を伸ばしたのです。Cafe RONDINOは私がサラリーマン時代の最後の最後にニッポン放送の営業担当氏(彼も鎌倉在住でした)と打ち合わせをした思い出の場所なんです。

さてタベルナのお味ですが、私は人一倍味覚が鈍くて、なにを食べてもおいしく頂く人間なのですが、肉も魚もシラスパスタもリゾットもとても美味でした。今度は青池さんや健君も誘って訪れたいと思います。


十三秒間隔の光り       田村隆一

新しい家はきらいである
古い家で生まれて育ったせいかもしれない
死者とともにする食卓もなければ
有情群類の発生する空間もない
「梨の木が裂けた」
と詩に書いたのは
たしか二十年前のことである
新しい家のちいさな土に
また梨の木を植えた
朝 水をやるのがぼくの仕事である
せめて梨の木の内部に
死を育てたいのだ
夜はヴィクトリア朝期のポルノグラフィーを読む
「未来にいかなる幻想ももたぬ」
というのがぼくの唯一の幻想だが
そのとき光るのである
ぼくの部屋の窓から四〇キロ離れた水平線上
大島の灯台の光りが
十三秒間隔に                 『新年の手紙』より


♪「へーつと」とよく言いし祖父の言葉をいま孫が言う「へーつと」と 茫洋