蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

続 網野善彦著作集第17巻「日本」論を読んで

 

照る日曇る日第140回

私たちは、そも何のために、何に忠義立てして、重厚長大な国家という鎧兜を身にまといたがるのだろうか。恐らくは己の魂に自恃がないからだろう。

と、これは私のひとりごと。

それにしてもこれから日本はどこへ行くのだろう。私たちは日本をどうすればいいのだろう。

今を去ること遠くない時代に、この国の理想は「東洋のスイス」であると語った人もいた。

またある痴人は、日本という国家を解体し、アジアの南極にすることが生涯の夢であるという。特定の国家権力と戦力がない永世中立世界万民公有自由通商地域にしようというのである。さうしてそれが実現不可能ならば、廃藩置県ならぬ「廃国立県」を行なって江戸時代の昔に戻ろう。「統一と団結」から「孤立と自由」へ、「集権」から「分散」へ向かおうというのである。

思うに、少なくとも沖縄・東北・北海道はいますぐ独立すべきだろう。そのほうがけっきょくお互いの仕合せになるだろう。さもなければこの奇妙奇天烈な国家は、勝手に暴走して人民をまたしても鉄のくびきで緊縛し、最後にはお得意の「自衛のための侵略戦争」をおっぱじめるにちがいない。

と、わが親しき三年寝太郎は、このときばかりは目を山猫のようにらんらんと光らせて熱く語るのであった。

♪あと一日出席足らぬ学生の哀願を心を鬼に退けて去る 茫洋