蝶人戯画録

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ロッシーニのオペラ・ブッファ「新聞」を視聴する


♪音楽千夜一夜第65回


スタンダールによって「ナポレオンは死んだがロッシーニが誕生した」と称された音楽家のオペラ「新聞(ガゼッタ)」をビデオで堪能しました。

 05年7月10日にスペインのリセウ歌劇場でその管弦楽団・合唱団をマウリチオ・パルバチーニが指揮した公演のライブでしたがなかなか楽しめました。

 お話の筋はここに書いてもしようがないほどいい加減なもので、ともかくイタリアのお金持ちの男が自分の娘の夫にふさわしい人物を新聞広告で募ったところ、クエーカー教徒やイスラム教徒やトルコ人、アフリカ人など世界各地から希望者がおしかけ、すでに恋人がいた娘とでたらめな父親との間にさまざまな騒動が盛り上がるのですが、最後には例によって例のごとくお決まりのハッピーエンドに滑り込むという他愛がなくとも十分に楽しめるオペラ・ブッファの傑作です。

 歌手ではヒロインの娘リゼッタ役を歌って演じているスタイル抜群で超セクシーなティレツィア・フォルラがダントツにチャーミングで、恋人のフィリッポ役のピエトロ・スパーリョともども、さながら雌雄2羽の鳥が次第次第に壮絶に鳴き交わし合うようなロッシーニお得意のクレッシェンドでは、白熱の歌合戦を繰り広げて満場の拍手喝采を呼んでいます。

 指揮者もベテランの味をたっぷり出していますが、しかしそれ以上に賞賛すべきは、この公演の美術・衣装をも担当した(ノーベル文学賞受賞者でもあるという!)ダリオ・クオーの素晴らしい演出。美しく幻想的な色彩の氾濫はそれ自身が雄弁な音楽であるといっても過言ではないと思います。

♪蝶と見えまた花と見え散る桜 茫洋