蝶人戯画録

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「ゲバゲバサマーショー展」をのぞいてみたら


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東京のJR大塚駅北口徒歩10分にある画廊MISAKO&ROSENで7月19日まで開催されている展覧会「ゲバゲバサマーショー」は、新進気鋭の現代作家たちのカジュアルな新作が狭い会場せましとラインアップされ、それこそゲバゲバで楽しいカオス状況をかもしだしています。

油彩、アクリル、水彩、スケッチ、肖像、いたずら書きなども交えた小品が中心ですが、アイデア満載のビデオ作品、インスタレーションなども出品されており、おもちゃ箱をひっくり返したようなハチャメチャさと新鮮さが魅力です。

参加アーティストは森田浩彰、後藤輝、服部あさ美、ディーン・サメシマ・トレバー・シミズ、今井俊介、岸本雅樹、相田可奈子、ダン・ハーズ、ウイル・ローガンなどの面々ですが、私は佐々木健が描いた2つの小さな油絵の新境地に打たれました。

この作家はここしばらくはアンプや楽器などおよそ見栄えのしない身近な物をモノトーンで描き続けてきました。そういう石ころのように地味な物を凝視し、その物の内部に肉薄し、その物の核心をつかみ取ろうと地を這うような精進を続けてきたようです。

そして作家の努力と研鑚は、描かれたただのラジオやペットボトルが、平成のアール・ヌーヴォーとでも呼ぶべきある種の生命性を獲得し、「物の精霊」それ自体が発するような不思議な燐光を発しながら静かに輝いている、そんな光景をついに出現させたのではないでしょうか。

梅雨空の下、ギャラリーの外では無情の雨が降り続いていましたが、私は名状しがたい感動につつまれてそのちっぽけなキャンバスに見入っていました。


◎ゲバゲバな4週間→http://www.misakoandrosen.com/exhibitions/09/06/


水無月尽今年最初の蝉がなく 茫洋
水無月尽今年最初の仕事来る