蝶人戯画録

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ムーティ指揮ウイーン・フィルでモーツアルト・ザルツブルク・コンサ


♪音楽千夜一夜第83回

モーツアルトイヤーだった06年の1月27日に祝祭大劇場で開催された記念コンサートの実況ライブです。

 まずは内田光子の独奏でk503のピアノ協奏曲から始まります。ラ・ローチャなどの演奏では大振りになるこの曲ですが、内田はよくいえば内省的、悪く言えば神経質に演奏します。右手で和音を抑えたまま激しく打ち振られる左手。これは指揮も自分でやろうとする意思表示なのでしょうか。

次はメゾソプラノのバルトリの歌唱によるシェーナとロンド 「どうしてあなたを忘れられよう」 ですがここでは内田光子のピアノ伴奏が先ほどの曲よりも見事に冴えわたりました。文句なしの名曲の名演です。

「恐るるな、愛する人よ」 K.505 は内田が抜けて チェチーリア・バルトリ だけの独唱ですが、私ははしなくもいまから20年以上前に彼女がドミンゴと九州にやってきて歌った夜のことを思い出しました。

 3曲目の「彼をふりかえりなさい K.584は御大バリトンの トマス・ハンプソン の登場。
続く4曲目には「バイオリンとビオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364 」をなんとバイオリンがギドン・クレーメル 、ビオラがユーリ・バシュメット という豪華コンビで熱演。クレーメルはニクラウスよりもムーティとの相性のほうが良好と見受けられました。

5曲目の交響曲 第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」はまあ普通の出来ですが、再度登場したバルトリによるモテット「踊れ、喜べ、幸いな魂よ」 K.165 は聴きごたえがありました。
 おあとは「フィガロの結婚」 から “もうあんたの勝ちだと言ったな”と“ため息をついている間に” の2曲をトマス・ハンプソン が、「ドン・ジョヴァンニ」 から “お手をどうぞ” を2人が歌い、最後は「魔笛」 から フィナーレの合唱 をウイーンの合唱団が歌ってお開きに。もう結構これで満腹というほかはない記念コンサートでしたが、できれば指揮者がベームコンサートマスターがゲルハルト・ヘッツエルの名コンビならもっともっと素晴らしい演奏会になったことでしょう。

♪黄金虫救ってやりしうれしさよ 茫洋