蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

スピルバーグ監督の「ターミナル」を見る


闇にまぎれて bowyow cine-archives vol.16

これは故国を旅だってニューヨークのJ.F.ケネディ空港に到着したトム・ハンクス扮する主人公が、父の願いをなかなか果たせずに同空港の内部で延々と滞在を余儀なくされるというお話です。

ロシアの隣国と思しき主人公の母国クラコージアで突如軍事クーデターが勃発したためにパスポートやヴィザが無効になり、扉の向こう側のニューヨークに出て父が夢見たジャズメンのサインをもらうこともできず、かといって戻ることもできず、英語もろくに話せないトム・ハンクスは文字通り立ち往生してしまいます。

しかしそこはよくしたもんで、寝る場所、仕事、友人はもちろん彼に好意を寄せる女性まで出てきます。この不倫の恋に悩むスッチー役のキャサリン.セタ・ジョーンズが色っぽく、とっぽい田舎者トム・ハンクスに意地悪な空港管理の官僚役のバリー・ジャパカ・ヘンリーが好演しています。

すったもんだの大騒動がいろいろあって、最後は意を決した主人公が仲間たちの応援と悪者役の慈悲のお陰で空港の外に出て父の悲願を果たし、折り良く母国のクーデターも解決したために無事に帰国の途に着くというスピルバーグらしいハッピーエンドで終わります。

サスペンスとロマンスとコメディーを足して3で割ったそれなりにウエルメイドなハリウッド映画といえるでしょう。


木犀を探し歩くや浄妙寺 茫洋