蝶人戯画録

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バレエ「ザ・グレート・ミサ」を視聴する


♪音楽千夜一夜第87回

 グレゴリオ聖歌やクルタークやペルト、それに詩の朗読などをサンドウイッチにしながら、ゲバントハウスのバレエ団が同じゲバントハウスのオケをバックにモーツアルトのミサ曲ハ短調K427という希代の名曲を踊ります。

これは05年6月の公演ですが、そのおよそ1年前に演出・振り付け・美術を担当したクーヴ・ショルツという人が急死したので、その追悼のライヴではないかと思われます。
私は不勉強でこの人の名前も仕事もまったく知らなかったのですが、じつに才気煥発の持ち主です。

彼はたとえばミサ曲のすべての音符をダンスの一挙手1投足に完璧に置き換え、ソプラノとメゾソプラノが旋律を歌うところでは、2人の踊り手がそのボーカルを正確に運動化するのです。フーガに入るとその運動は激烈なものになりますが、音型が再起動されるたびに4組のカップルが代わる代わる同じポーズで運動を開始しては舞台の左右に遁走していく振り付けは見事というも愚かなほどでした。

メンデルスゾーンゆかりのライプッチヒにあるこの管弦楽団と合唱団、バレエ団にはかなり大勢の日本人が在籍しているようです。ダンスのソロを踊った木村規予加と大石麻衣子の美しい姿態ときびきびした演技に魅せられながら、私はこういう若くて美しい人たちは、かの地でどんな生活をしているのだろうとぼんやり考えていました。これでかれこれ1ヶ月間歯が痛むのとドジャース、楽天、中日が負けてしまったので、あまり前向きな発想になれずにいるのです。


♪古巣ヤンキースを叩きトーリ監督に仇討させようと思ったのに黒田のばかたり 茫洋