蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第1部うつろい 第27回


bowyow megalomania theater vol.1

10月11日 晴

 久しぶりに快晴になりました。

お母さんと御父さんと一緒に、鎌倉駅から横須賀線に乗って、大船駅で東海道線に乗り換えて藤沢に行って、藤沢で小田急に乗り換えて、各駅停車でS駅に着きました。

「ぶどうの園」の園長先生のところへ会いに行きました。女の園長先生は、おっしゃいました。

「重い障碍者をみると、人は感動します。感動するものは、すべて芸術です。芸術とは文化です。だから、障碍者は文化財です。文化財であり、人間国宝であり、ユネスコとは無関係な世界遺産です。障碍者は、彼ら独自の文化を持っているのではないでしょうか。私はこれから、障碍者のカルチャーを新しく創造していきたいと考えています」

お父さんが、かしこまった顔で言いました。

「その通りです。文化にもいろいろある。先進国の文化だけが文化ではありません。むしろいわゆる遅れた国、経済的には滅びかけた国の文化の方が今となっては尊い。高度に発達したはずのアメリカの文化が破産しそうになった今、彼らの先住民であるインディアンたちの古めかしいけれど調和に満ちて幸福だった文化があこがれをもって振り返られています。僕はケビン・コスナーの「ダンス・ウイズ・ウルブズ」を見てそう思いました。しかし去年ニューヨークのアルゴンキンというホテルに泊まったとき、ボーイにこのアルゴンキンという名前の由来を知っているかと尋ねたらなにも知らないというのであきれ果てました。WASP共は自分たちの先祖が他ならぬ現地でみな殺しにしたアルゴンキン族の名前を平気でホテルの名前にしているようですが、人間として恥ずかしくはないのでしょうか?」

僕は、お父さんは自分でもよく分からない話を、分かった風に得意そうにしているな、と思いました。でも、お母さんはニコニコしながら黙って2人の話を聞いていました。



♪マイアミで1泊しようと言いしはスエーデンのモデルなりしが 茫洋