蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第1部うつろい 第33回


bowyow megalomania theater vol.1


僕はとてもとても悲しくなって、大好きな家族の人にそんなに嫌われてはもうどうしていいのか分からなくなって、「岳君、嫌いですか、嫌いなんですか?」と、3人に聞きました。

そしたら3人が声を揃えて
「岳君なんか大嫌い!」
と言ったので、僕は泣きました。
僕は身も世もなく大粒の涙をじゃんじゃん流しながら泣きました。

「岳君、嫌い? 嫌い? 岳君、好きです。岳君、好きです」
と言ってわあわあ泣きました。

すると、お母さんまで泣きました。
お父さんと純ちゃんの目にも光るものがありました。

それから3人が口々に
「だいじょーぶ。岳ちゃん大好きだよ!」
と叫んでくれたので、僕は、
「岳ちゃんじゃないよ。岳君だよ」
と言って、やっと泣くのをやめました。

僕はこの人たちに嫌われたら生きていけないのです。命が続かないのです。
だからもう絶対に僕をからかうのはやめてください。冗談言うのはやめてください。


昨日91歳の老人が麦畑で死んだ 茫洋