蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2010年睦月茫洋花鳥風月歌日誌


♪ある晴れた日に 第70回



てめえなんか死んじまえと叫ぶたびにどこかで誰かが死んでいる

あんたのことが大好きよと囁くたびにどこかで花が咲いている

クビライの奴婢となりたるわが国の行く末憂う今年の初夢

興隆しやがては沈む英国の大人の姿大和も辿れよ

沖縄よ独立せよすべての基地すべてのアメリカー、すべてのヤマトンチューを投げ捨てて

処女の生き血吸う酔狂老人死してヌーベルバーグ死せり

昨日91歳の老人が麦畑で死んだ

ムクよ墓穴から飛び出してアホバカ小沢と鳩山の喉笛を咬め

マイアミで1泊しようと言いしはスエーデンのモデルなりしが

美貌のヴァイオリニスト腋の下を見られている

伊勢丹の武藤氏斃れたり歳六十三瞼に浮かぶよ颯爽たる展示会の姿

ト短調で生きるなハ長調で生きるんだ

歯が痛いなかで半年も生きていることよ

1羽の鳶をどこまでも追いかける2羽の鴉

他愛ないあほばか番組見る妻があどけなく笑うのが好きだ
 
ウジ虫のような存在にも生きている意味があるはず

悲しみはイ短調で鳴る横須賀線の踏切

お母さん誕生日おめでとうと言うて次男横浜に去る

地デジチューナーなんて役立たずだとお払い箱にする

大枚をはたいて下らぬ公演を見せられてそれでも喜ぶ阿呆な観客

大戸屋で20円のお釣りをもらいそこね終日不愉快な水曜日なり

大船の観音様の左側に毎朝のぞむ富士の白雪

フランク永井になった夢を見た。一晩中有楽町で逢いましょうを歌っていた。一睡もできなかった。

仏とは誰ぞ仏の教えとは何ぞお山を降りし僧の悩みは深し

われに問うほんとうに南無阿弥陀仏と唱えるだけで極楽往生できるのだろうか

正月のあっという間に終わること

虎減って寅歳増えるお正月

虎絶えて寅のみ殖えるお正月

墨痕淋漓「解脱」てふ賀状到来す

歌の在庫がなくなった

昔の自分は死んだらしい


♪目には目を 歯には歯を 死には死を 詩には詩を 茫洋