蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

文化学園服装博物館で「ヨーロピアン・モード展」を見る


茫洋物見遊山記第21回&ふぁっちょん幻論第59回

18世紀のマリー・アントワネットの時代から1970年代のポスト・シャネルの時代まで、200年の時系列をいっきに通覧する欧州モードのコレクション・ア・ラ・カルトです。

これを一瞥していると、それぞれの時代の社会経済政治文化の流れを、いかに当時の女性の衣服がストレートに反映していたかが、あちこちで読みとれてなかなかに興味深いものがあります。
とりわけ私が細い狐目をお皿のように丸くして、食い入るように眺めたのが1920年代のドレスとバッグでした。

不自由なコルセットから解放され、過剰な装飾についに別れを告げ、のびのびと美脚を街頭に向かって突き出したミニドレスたちのなんと簡素で美しいことよ!

大胆なフォルムと目の覚めるような色、柄、デザイン、そして選び抜かれた最高級の素材と繊細な意匠の数々。なかんずく溜息が出るような藝術的な完成度を誇るのは、あまりにも小さな、そしてあまりにも華奢な布製のバッグ。これぞアールデコの極致、人類文化史上の最高傑作といっても過言ではないでしょう。

1920年代が現代ファッションの原点であるとよくいわれますが、それどころかここにこそ近未来のトレンドの源流が凝集していると確信できた垂涎の展覧会でした。


♪ガングロの娘美白になりて娘と歩いてる  茫洋