蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第13回


bowyow megalomania theater vol.1

10月29日

お母さんが、弟の純君を叱りました。
「こらっ、純。もっとちゃんとご飯を食べなさい」
僕も言いました。
「こらっ、純。もっとちゃんとご飯を食べろ!」

 そして、僕は、純がちゃんとご飯を食べないし、お母さんに純のことばかり注意するので、頭にきて、純の頭をごっつんと殴りました。

純は、びっくりして僕の顔を見ました。お母さんは、
「岳がほんきで怒ってるよ。マジだよ」
と言ってたいそう驚いて
「純君、どうしたの、なにが気にいらないの? どこか具合でも悪いの?」
と聞きました。

「ううん、僕どこも悪くないよ。大丈夫ですお」
と答えると、お母さんはなおも僕のことが心配になったようで、急に僕の機嫌を取ろうとするように、
「岳君、どこか遊びに行きたいところがあるんでしょう?」
とカマを掛けてきたので、僕が
「火星社書店」
と答えると、お母さんはもう一度びっくり仰天して
「そ、それは高尾山の麓の本屋さんじゃないの。あそこはあなたがもっと小さい頃に日曜日ごとにさんざん行ったところじゃないの。そんな遠いところじゃなくて、もっと近いところで岳が行きたいところがあるでしょ?」
と言ったので、
「それじゃあ川崎の岸さんちへ行きたいお」
と言ったら、お母さんはまたまたあわてて
「川崎も遠いよね」
と言ったので、
「それでは僕は大船のイトーヨーカ堂に行きたいです」
と言ったら、お母さんは思わず両手を胸の前でパシリと打ち合わせて、
「よおーし、じゃあ岳君、イトーヨーカ堂へ行こう。行こう、行こう、みんなで行こう!」と大声で叫んだので、僕は「僕は岳ちゃんではありません。岳君です!」
と言いました。


1200円の三浦スイカを食べにけり 茫洋