蝶人戯画録

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「シャンドス・レーベル発足30周年記念30CDセット」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第155夜


もう市場からは消えて久しい一枚当たり130円の超廉価の当盤は、1979年に英国の名門インディーズレーベルが発売した限定版30枚組のCDです。

やはりお国ものということで中心はパーセル、ウオルトン、バックス、ディーリアス、エルガーホルスト、ヴォーンウイリアムズなどの英国勢の音楽を、パロット指揮タバナープレイヤー、マリナー指揮ASMF、ブライデン・トンプソン指揮のアルスターso、リチャード・ヒコックス指揮ボーンマス響、ギブソン指揮スコットランド響などが楽しげに演奏しています。

そのうちの極めつけは先月の14日に84歳でなくなったチャールズ・マッケラス響がデンマーク国立響を指揮したヤナーチエックの「グラゴル・ミサ」とコダーイの「ハンガリー詩編」でありましょう。同梱されたナイジェルケネディのリサイタル、マリスヤンソンス指揮オスロフィルのチャイコフスキーの5番交響曲を凌駕するあまりにも見事な演奏です。

マッケラスはこの2人の作曲家のスペシャリストですが、筆者がもっとも評価しているのは他ならぬモーツアルトの演奏で、彼が米テラークに遺した交響曲集ほど典雅さとモダンさを両立させている演奏は稀でしょう。ワルターやセルやベームバーンスタインに一瞬といえども倦んだことにある方はクレンペラーと同様に死ぬ前に一度は耳にしておくべき珠玉の名盤と確言できませう。



二度までも太平洋に投げ出され根岸氏は鱶に喰われざりき 茫洋