蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

グラモフォンの「マーラー全集」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第156夜


没後100周年を記念して陸続とリリースされているマーラーの18枚組の全集です。

交響曲関連では1番がクーベリック、2番メータ、3番ハイティンク、4番ブーレーズ、5番バーンスタイン、6番アバド、7番シノーポリ、8番ショルティ、9番カラヤン、10番シャイイー、大地の歌ジュリーニという豪華絢爛なラインアップ。

ちなみに小澤ボストンは1番第2楽章のオリジナル「花の章」のみのご出演と、さすがプロフェッショナルな音楽屋ドイツグラモフォンはよくお分かり。適材適所の打順ではないでせうか。

 どんどん続けて聞いていると、最近の私の好き嫌いがはっきりしてきます。
「いいな」と思うのはクーベリックアバドシノーポリ、シャイイー、ジュリーニなどで、熱血バーンスタインや今回の目玉であるカラヤンの再録ライブなども意外なことにあまり心に残りません。おめえさん、なにをそんなに力んでいるのだ、ていう感じでげす。

 かつてメータがウイーンフィルと入れた2番を聞くと、「未完の大器」なぞといわれたこのインド人の最高の演奏が75年2月のこのライブであることにいささかの感慨もわいてきます。俗に指揮者は歳をとればとるほど良い演奏をすると言われていますが、メータと小沢がその例外であることだけは間違いないようです。

 しかし交響曲より面白いのはやはり歌曲の名曲で、とくにシャイイー&ベルリン放響による初期のカンタータ「嘆きの歌」とアバド&べリンフィルの「少年の角笛の魔法」は、ずしりとした聞きごたえがありました。

マーメードの刺青したる右腕を窓から出しつつ運転する男 茫洋