蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第32回

bowyow megalomania theater vol.1


11月5日 晴れのち雨


ひと晩たつと公平君ものぶいっちゃんもだいぶ元気を取り戻しました。

大勢の警官隊にふくろだたきにあっているのぶいっちゃんを見た公平君がピストルを振りかざして突入していったら、おまわりは一斉にあとずさりしてから、またじりじりと2人を包囲してきたので、公平君がピストルの安全装置をカチャリとはずし、

「くそっ、ばかあ、のぶいっちゃんをはなせ、なさなないと一発お見舞するぞ!」

と叫んだら、おまわりたちはたんなるおどかしだと思ってあざ笑っていよいよ包囲の輪をちぢめてきたので、あせった公平君は一瞬逃げ出そうかと思ったのでしたが、

「いやここで逃げ出したら男がすたる、男の一分に申し訳がない」

と思い返して、

「にゃろめ、おまわりなんか消えろ!」

とジュゲムジュゲム心に念じつついいかげんに引き金を引いたら、

「ズドン!」

という鈍い衝撃音が走って、いちばん先頭の「第7機動隊」とワッペンにかいてあるおまわりのそのワッペンのところからいきなり鮮血がほとばしり、若いおまわりが朱に染まって地面に倒れ、その他のおまわりたちは蜘蛛の子を散らすように阿弥陀山の急斜面を賭け下って雲を霞と逃げて行ったそうです。

「血まみれのおまわりは可哀想だったけれども、もはやどうしようもなくって、仕方なくのぶいっちゃんを助け起こし、うんとこさと抱きかかえて小川のところまでやってきたけれど、とうとう力尽きて倒れてしまったんだ」

と、公平君は弱しい声で物語りました。


小夜更けてここだも集く虫の音かな 茫洋