蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第37回


bowyow megalomania theater vol.1


のぶいっちゃんとひとはるちゃんは、「よしきた、がってん」と軽いノリで山道をすたこら走りだしました。

僕たちは朝から昼までかかって不思議なお家の周りを倒木でびっしり覆い、頑丈な柵を作り、警官隊が踏み込んできても、かんたんには侵入できないようなバリケードを汗水たらして組みあげました。

不思議なお家は、もはや強力な砦になってしまいました。

すでに陽は高く上り、背筋をぴんと伸ばしたケヤキの葉を透かして、午後3時の太陽と青空が僕たちを無言で見守っていました。灌木の茂みのあちこちでオオルリやカケスが不安そうに小刻みに位置を変え、そのたびにカサコソと乾いた物音をたてています。

そのとき突然僕は、JRの山手線で渋谷駅を通ったときの音楽で頭の中がいっぱいになって、もうなにがなんだか分からなくなってしまいました。渋谷駅で山手線が発車する時の音楽と目黒駅の音楽とは同じだったかしれとも違うやつだったか、そればかりが気になって気になって、頭の中がかっこに入れられたみたいになって、いま眼の前で繰り広げられている嵐の前の静けさのような風景が現実のものとは思えませんでした。

しかしそれは、確かに現実なのでした。

見渡す限りのススキが原に、およそ400から500名くらいの機動隊員たちが、完全武装して少しずつこちらに向かってくる様子が、まるでいつか見た映画のシーンのようでした。


胃にバリウムを満載しわれは真っ逆さまに墜落せんとする老戦闘機 茫洋