蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2010年神無月茫洋花鳥風月人情紙風船

kawaiimuku2010-10-31


♪ある晴れた日に 第81回


渓谷の小道をゆくは人か魔かげに美は恐るべきもののはじまり

グーグルで検索すればわが家の玄関口に靴の並べる

10月の16日に蝉が鳴く誰かさんの誕生日を祝うがごとく

人格が毀損汚染されているからあらゆる制度が劣化する

とっくに括弧に入れられた純粋理性をゴキブリどもが喰い散らかしている

おシャモジは奇麗に洗ってくださいね何回言ってもあなたは聞かないけれど

台所の流しの隅の物入れに髪の毛が入った風呂水を捨てるのは止めてください

邯鄲鳴く桜ケ丘の駅前で旅行帰りの息子待ちおる

読んよし眺めてよし一粒で二度おいしいイソップ物語はいかが

読めども読めども滓ばかりこれがほんとの一巻の終わり

難しいことをもっと難しくその難しいことを浅はかにその浅はかなことを面白おかしくさわぐ世間よ

○○ちゃんほどいい子はいないと言ってみる

モーツアルトは何故殺されたのかとひと晩じゅう考えていた

胃にバリウムを満載しわれは真っ逆さまに墜落せんとする老戦闘機

バリウムを呑まされた蝙蝠の如く必死で鉄棒にしがみついている
あと何年こんな芸当に堪えられるのだろう

右からって言うとるのになして左から回るあんた日本語分かっとるんかね

胃検診上杉謙信遺賢臣意見親

白い庇に降る雪は過ぎし昔の思い出か

死に急ぐカマキリを道端に放つ

人間が2人居ればそれが演劇のはじまり

ああ人の世は魑魅魍魎の百鬼夜行

雲去領寂もう鳴かぬか蝉

一粒の栗の実の比類なき充実

小夜更けてここだも集く虫の音かな




仕事来い来れば困るでも来ないよりいい仕事来い 茫洋