蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

花村萬月著「百万遍流転旋転 上巻」を読んで


照る日曇る日 第417回

著者自身を思わせる東京生まれの未成年が、1973、4年の京都に滞在しながら、絶世の美女やら清純な高校生やら古本屋の人妻やら綾部出身の京大病院の看護婦やら、レスビアンの芸大生やらに寄ると触るとたちまち惚れられ、会うや否やただちに挿入し、また引っこ抜いて挿入し、窓のない下宿の六畳間でも電柱の傍でもトイレの中でも、連れ込みでも京都ホテルのベッドでも激しく突きあげ、あいともに声を上げ、のたうちまわって性交し、性交する度に極度の絶頂に幾たびも達し、そのことを決して忘れず、そのことが癖になってますます愛されるようになり、尻の穴にお互いにシャブを突っ込みあって全身ぞくぞく痙攣し、三白眼の人妻に首を絞められて半死半生になり、ヤクザの情婦の目の前で情婦をあちらの世界にいかせ、中卒なのに京大生を名乗っておばはんたちに尊敬の眼で見つめられ、千本通りを北上して北山通りから北白川を経て、市電の六番で左京区百万遍界隈をぐるぐる回って出町柳ラ・ボエームマリア・カラスの夢遊病の女を聴く。そういう長髪のヒッピーに私もなりたい。

人間は性欲人間と非性欲人間および時独性欲人間の3種に分かたれる 茫洋