蝶人戯画録

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SONY CLASSICAL VIVARTE BOX全60枚組CDセットを聴いて

♪音楽千夜一夜 第205夜

ソニーが連発する超安価シリーズには「安物買いの銭失い」が得意の私も、ついつい財布のひもを緩めて買ってしまい、あとで激しくほぞをかむことも多いのですが、この1枚203円の古楽シリーズはじつに素晴らしかった。

バッハを皮切りにヴィヴァルディ、ハイドンモーツアルトベートーヴェンなどの天下の名曲がなんと60枚も並んでいるのでほくそえんでいたのですが、じつはこれが私の大嫌いなピリオド演奏ばかりだとはてんで承知していなかった。

いっそ聞くのはやめてお蔵入りにしようかと思ったのですが、念のために最後の60枚目のヘンデルの「水上の音楽」をちょいと聞いたのが運のつき。ターフェルルムジークをジャン・ラモンが指揮した、その目も覚めるように新鮮な演奏に、正統派のビーチャム以来の感動を覚えてしまい、次々にプレイヤーに乗せることに相成りました。

ここに収められているのは、かつて「テルデック」「セオン」「ドイツ・ハルモニア・ムンディ」など古楽に大きな実績を持つレーベルで活躍した名プロデューサー、ヴォルフ・エリクソンが1989年にソニーで立ちあげた古楽専門レーベルVIVARTE(ヴィヴァルテ)から発売されたCDですが、結局はこの御仁が辣腕の目利きなのでしょうね。

名手アンナー・ビルスマを中心に結成されたアンサンブル「ラルキブデッリ」をはじめ、お馴染みのグスタフ・レオンハルトクイケン3兄弟、ブルーノ・ヴァイル、フリーダー・ベルニウス、パウル・ファン・ネーヴェルなどの指揮者が率いたターフェルムジーク・バロック管弦楽団、シュトゥットガルト室内合唱団、ウエルガス・アンサンブルなどの見事な演奏に、さしもの古楽器嫌いも両手をあげて降参してしまったのでした。


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