蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2011年文月 蝶人狂歌三昧


♪ある晴れた日に  第94回


天啓の如く鮎閃きぬ

土曜日はゴマダラカミキリと遊びけり

ニイニイゼミ鳴きて夏綻びぬ

ものみながはげしくにおう夏の夜

少数の見知らぬ友に日記書く

丸印は性交ありし日か荷風日記

かにかくに今日もなんとか生きている

秋風やパソコン嫌いの女がひとり

佳麗衆カレー週加齢臭鰈集華麗秀

今宵特許許可局開店杜鵑

かくかくしかじかてふコマーシャルが大嫌いなわたし

親子丼食えば死んだ鶏を食うておる心地す

ガンにならないように麵麭の黒焦げを削る

この子居所がないこの老人居所がない

祖父に巻いてもらいしゲートルの柔らかきこと

見る前に飛ぶな褒めるな有名建築家の商品ども

1匹の雌を争い2匹の巨大雄ウナギが滑川に躍りあがる満月の夜

柳腰の雌を狙いし雄ウナギ噛み合いしまま水面を超えたり

空青く草は緑に燃える日よわが生命も赫奕と燃ゆ

原発はニッポンを死に至らしめるガンである撲滅せよガン

だんだん好きな人が減って嫌いな奴が多くなる

三台も自動車を並べている家の玄関をモンキアゲハが通り過ぎる

人一人殺しちゃっても死刑にならぬ日本は素敵な法治国家

駅近く線路の傍にカンナ咲き鎌倉の夏今年も来にけり

全国の男の顔色なからしめ花咲き誇る三千世界

性愛の極意を生きた小島信夫永井荷風の跡を継ぎしか

人として最低の人を任命する最低の人辞表受け取る

ニッポン戦場、ニッポン洗浄、ニッポン沈没、ニッポン脱出

ひめじおんのうえで胡蝶たちがつかのまたわむれるやうに

父上の死に目にも母上の死に目にも会えなかった

築地なる朝日新聞コケルとも鎌倉朝日とわに栄えん



君知るや消えちまった私の行方を 蝶人