蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第6回


bowyow megalomania theater vol.1


12月6日 晴

金沢八景の三郎の滝から太刀洗いを経て番小屋に居る大きなシェパードに吠えられながら、十二所神社の前の県道に出て霊園の坂をえっちらおっちら登っていくと、後ろから走って来た車がどんどん僕たちを追い越していきました。

歩き疲れて鶴ケ丘会館の広告看板の下でへたり込んで座っていると、坂の下の方から三台のトラックがゆっくりと現れました。どこからやって来たのでしょう、その大きな陸送トラックは。

最初の一台にはフロントグラスの上の、バスなら行き先表示板にあたる場所に「働く人」と書かれ、続く二台目には「遊ぶ人」、そして最後の三台目には「さすらう人」と掲げてありました。

すると洋子が三台目のトラックを指差して、
「私、あれがいいな」
と呟きました。のぶいっちゃんは、
「僕は、やっぱ働く人だな」
と言いました。
残ったのは「遊ぶ人」です。僕は、やっぱ遊ぶ人だったんだと思いました。



東電のフクシマ原発恐ろしや一億の民被爆者と化す 蝶人