蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第7回

bowyow megalomania theater vol.1


あっと思った時には、その三台のトラックは急停車して、中からねじりはちまきをした背の高い「働く人」と、でっぷりした「遊ぶ人」、そしていちばん年の若い「さすらう人」がドアをバタンと閉めて運転席から次々と飛び降りてきました。

四〇から五〇歳くらいの真面目そうな「働く人」が、のぶいっちゃんの顔をじろりと見て、
「おい、お前たち、どっかへ行くなら乗っけてやろうか」
 と言いました。
のぶいっちゃんが黙って僕と洋子の顔を見ました。僕はどう言っていいのか分からないので黙っていました。
「どおせどっかの施設から逃げて来たんだろう」
と、お腹にぐるぐる包帯のようなものを巻き付け、赤い顔をした「遊ぶ人」が図星を言い当てました。
「君たちをとって食おうってんじゃあないぜ。もし困っているなら、どこへでも連れていってあげるよ」
と、人の良さそうな「さすらい人」が声を掛けました。


物喰えば歯がボロボロとかけていくいずれは全部消えて無くなる 蝶人