蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

アルゲリッチの「EMI盤室内楽集」を聴いて

♪音楽千夜一夜 第216回
 この節はソニーにならってEMIも続々激安CDを投入してくれるのでうれしい。

これはマルタ・アルゲリッチをフユーチャーしたベートーヴェン、フランク、ショパン、シューマンハイドンメンデルスゾーンなどの室内楽8枚組で、1枚わずか265円でわがものにすることが出来る。

 最近はあまり名前を聞かなくなった名手パールマンとのクロイツェルソナタがことのほか素晴らしい。クレメールと組んだ同曲も良かったが、これはさらにその上を行く名演で、何度聴いてもうっとりと聞き惚れてしまう。パールマンときたら、むちゃくちゃに乗りまくっているのである。

アルゲリッチはいつでも自分のイニシアチブで音楽を積極的にリードするが、そのアクチブな突っ込みに挑発され、インスパイアーされた相手が、他のピアニスト相手では未踏の地点にまでめくらめっぽう前進、前進、また前進することを強いられ、それが彼らにとっても、私たちにとっても、至上の音楽体験をもたらしてくれるのである。


女王様の愛の鞭に踊る奴隷の快楽よ 蝶人