蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第3部さすらい 第17回


bowyow megalomania theater vol.1



僕は涙が流れていましたが、どうして涙が出てくるのか分かりませんでした。

あの可愛らしい洋子を一人占めしたい。朝から晩まで自分のものにしたい。のぶいっちゃんなんかに絶対にわたしたくない。口もきいてほしくない……。

そんな強い思いが僕の全身を衝き上げてきて、その衝き上げた気持ちの行き先がどこにもなく、エッエッエッエッと言って結局はおびただしい涙になるのでした。

こんな絶望的な気持ちのどん底に沈んでしまうんのなら、洋子はどうして僕とねんねグーしたのか。

いっそのぶいっちゃんだけの女であってくれた昨日までのほうがよっぽど楽でとかったのにい、と、思いましたが、そう思っただけでも胸が苦しくて、僕はいったいどうなってしまったんだろう。



  この眼脂のこの臭さがおらっちの臭さだ 蝶人