蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ムルナウの「最後の人」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.151

こちらは「タルチュフ」の前年1924年に製作された名編で、ベルリンの名門ホテルの名物ドアマンのエスカレータ物語。

寄る年波に勝てず支配人から洗面所の世話係に降格された主人公は、プライドと共に絢爛豪華なその立派な制服をもはや着られないとしって失望落胆する。

おりしもその夜は姪の結婚式。支配人からはぎとられた制服を夜陰に乗じて盗み出しいつもと変わらぬ上機嫌をよそおいつつ鯨飲する主人公。しかしその恰好ではアトランチックに入れないではないか……。

とかなんとか色々あって人世に絶望した主人公はトイレの前で野垂れ死にするところで映画の幕はいったん降りるのだが、それではあんまり可哀想だというので脚本家がハッピーエンドのシナリオをかくという軽さと瓢逸さがお洒落です。


お前は歌うな 黙ってそこで大人しくしてろ 蝶人