蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

2011年大晦日のベルリンとウイーンの音楽会を視聴して

♪音楽千夜一夜 第245回


去年の大晦日に欧州の2つの首都で行われた年越しコンサートとオペラを録画で見物しました。

ベルリンンフィルを率いてジルベスターコンサートを振ったのはお馴染みのサイモン・ラトル。エフゲニー・キーシン迎えて演奏したグリーグの協奏曲を中心にストラビンスキーの火の鳥やラベル、ドボルザークブラームス、シュトラウスなどいいとこどりのアラカルトでしたが、さしたる感銘を覚えず。

ひところの低迷を脱したかに見えたこのコンビですが、ティーレマンヤンソンスの大活躍に比べるとそうとう格が落ちる。そろそろ別の指揮者に全トッカエしてもいいのではないでしょうか。

いっぽうウイーンでは正指揮者フランツ・ウエザー・メストを迎えた国立歌劇場で恒例の「こうもり」が上演されましたが、どこでどの曲をやってもつまらないこの謹厳実直だけが取り柄のこの人物の棒では、到底かつてのミュンヘンの夜のクライバーのシャンパンが沸騰するような喜悦感は皆無でした。

ゆいいつの目玉はその演出が当地生まれの名人オットー・シェンクだったことで、なんと御年81歳の当人が終幕のカーテンコールに登場すると、ここぞとばかりに嵐のような歓呼の声が劇場に渦巻きました。表層だけの薄っぺらな演出家が跋扈するなかで、彼のようなオーソドクスなやり方の値打ちをようやく世界のオペラファンも分かってきたのではないでしょうか。

貧乏人から情け無用とむしり取る鎌倉税務署に災いあれ 蝶人