蝶人戯画録

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ジョージ・スティーブンス監督の「ジャイアンツ」を見て

kawaiimuku2012-02-21



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.203

1956年に製作されたハリウッド映画の大作で、麗しのリズ・テーラーと岩のように頑丈なロック・ハドソン、そして本作を一期に泉下の人となったジェームズ・ディーンが競演しています。

人種差別を時代に先駆けて鋭く摘発したこの映画最大の見どころは、牧場王ハドソンに仕えるしがない農奴から一躍アメリカ西部を代表する石油王に躍り出たジェームズ・ディーンの嵐の中の大パーティ。ではなくて、小さなエピソードのように描かれているハドソン対バーガーインの頑固親父の人種偏見をめぐる乱闘で、溺愛する息子デニス・ホッパー。ではなくて、その妻のメキシコ人のために老体に鞭打って徹底的に殴り合うロック・ハドソンの姿と、そんな彼を熱愛するリズの夫婦愛は感動的なものがあります。

改めて鑑賞していて気がついたのは「陽のあたる場所」や「シエーン」の監督であるジョージ・スティーブンスの巧みな演出で、これによって2人の凡優の存在が見事に造形されたのでしょう。ちなみに原題は時代に抗して力強く生き抜く巨大な男ロック・ハドソンを意味する「GIANT」で邦題の「ジャイアンツ」は間違い。これでは日本プロ野球最大ののアホ馬鹿巨悪球団名になってしまう。

なおこの作品の撮影直後に急死してしまうジェームズ・ディーンは、直前の2作品に比べると背伸びした空回りの演技が目につきますが、長生きすればきっと米国を代表する名優になったことでしょう。


からくも冥界から蘇り宝石耀く朝を迎えし哉 蝶人