蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2012年長月 蝶人狂歌三昧

kawaiimuku2012-09-30




ある晴れた日に 第114回


一度だけマリア・カラスのように歌ってみたいな五七五七七で

横須賀のマクドナルドで口にした1杯100円のコーヒーの不味さよ

この期に及んで右肩上がりの成長を夢見る左前左巻きのオッサンたちよ

現世の有象無象を見下して君は最後のネアンデルタール人

われもまた2002年夏の海の点景となり終せぬ

音楽かはた雑音かこの凄まじきクマゼミの声

鎌倉のカドキホールは今日も葬儀天国も地獄も満員だろう

鎌倉では毎日毎日人が死ぬ天国も地獄も満員だろう

いつの日にか君は大成するというそれまでわれは生きておるべし

朝っぱらから小説を読んでいる極道映画を見ている横着者

掲示版に訃報が二枚八月尽

蝉が鳴くお前は去年の蝉ならず

蝉時雨行方不明者は見つからぬ

蝉時雨妻子の居らぬ一軒家

迷蝶のさして迷わず飛びゆけり

風天の虎と発する革命戯

荻と萩の区別がつかぬ男かな

秋雨やガソリンスタンド終業す

秋茄子を一袋百円の有り難さ

白露過ぎわが陰嚢の冷たさよ

今日もまた時給40円の労働に汗を流す子我が子愛しや

地の果てに斃れし君は世の光地の塩の如く今も耀く

この夏も現れ出でたる大ウナギ毎晩川を悠々と泳ぐ

こんな長さのこんなぶっといウナギでねと腕がどんどん伸びてゆく

昔阪神、次横浜、今ヤクルトという無節操者のわたしでございます

一日に一句を詠んでいるのは辞世の句を練習するため

外国では胃ろうなぞせぬと聞く死ぬときは死ぬがよかろう

たった一匹のお前のために蚊取線香もうもうと焚く

スマホで笑いfacebookで泣きtwitterで怒り狂うあなた

殺せと命じられたら躊躇いつつも殺してしまう人間とは弱き者なり

現れ出でよ周恩来のような中国人田中角栄の如き日本人

ひばりやカラスのやうに歌ってみたいなある晴れた日に

山からうみへどどししどっど死地に乗りいる四騎あり

窓を開ければマサイの戦士がライオンを狩るアフリカケニアのムパタホテルよ 

横浜の港の先に突き出たるハンマーヘッドはアートの目印


北枕でくわくわ寝ている息子かな 蝶人