蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ゲイリー・マーシャル監督の「プリティ・ウーマン」を観て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.414

 

いわゆる一つのシンデレラ・ストーリー。金の亡者が普通の人間の良識と愛に目覚めたという現代のお伽話なり。

 

どうでもよいことではあるが、こういうある意味ではてんで自立していない男女が一緒になって果たしてメデタシメデタシといくのかはなはだ疑問なり。

 

この映画におけるジュリア・ロバーツは顔の造作の大ぶりがあまり気にならなくて、娼婦からブルジュワ女への変身もそれなりに鮮やかに見えるのはダミー撮影のせいかしら。彼女はその後どんどんエグくなっていく。リチャード・ギアもこの頃はまだ若かった。

 

映画の中身より有名になったロイ・オービソンの60年代の名曲と1990年現在のロスの最新ファッションが興味深い。こんな音楽やドレスやカジュアルなど現在ではなんの価値もないだろうが、ギアがピアノの上に女を乗せて膝を割ると、女とピアノが大小高下さまざまな音を鳴らしはじめたので、これはまるでジョン・ケージの音楽のようだと私は思った。

 

 

スタインウエイの鍵盤の上でもつれる男女ジョン・ケージの音楽のように 蝶人