川島雄三監督の「とんかつ大将」を見て
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.415
いつでも誰に対しても親切できっぷのいい怪男子を演じるのは、私が(特に小津作品などでは)あまり好きではない佐野周二。とんかつが大好物の主人公は、本作では老若男女、とりわけ若くて美しい女性たちにもおおいにもてる。
病院の拡張工事にともなう反対運動に、美人院長(津島恵子)や料亭のおかみ(角梨枝子)などがからんで、貧民部落は大騒動。それが一段落したところでわれらが「とんかつ大将」は父の葬儀に出るために去っていくのだが、面白いのは突然登場人物が流行歌にあわせてミュージカルのように歌い出すこと。
一九五二年にいまは亡き松竹大船の撮影所で製作されたのらくらじゃなかったモノクロ映画である。しかし川島雄三の映画は、面白いんだか詰まらないんだかよく分からないところがあるね。本人も分からなかったんじゃあないのかな。
白梅の紅梅に遅れること五、六日 蝶人