ジョン・ウー監督の「ハードボイルド 新・男たちの挽歌」を見て
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.435
中国の傘下に組み込まれる以前の香港映画はどれもこれも無類に面白かった。
1992年に製作されたこのハードボイルド映画も、暴力団と警察が敵味方入り乱れて無茶苦茶に殺しまわる。それは確かに家や句や火薬やダイナマイトの浪費なのだが、そのゆく宛てなしのアナーキーさ自体が人間精神の自由さと儚さを象徴しており、単なるフィルム・ノワールとして片づけられない存在感を内蔵していた。
本作における監督のジョン・ウー、主演のチョウ・ユンファ、トニー・レオンなどの世界を股にかけた大活躍は誰もが知る通りだが、1997年の中国への併合以降の彼らはどこか根こぎにされたうつろな漂流者の面影を漂わせているように思われる。
やはり悪しき政治は、良き映画の友人にはなれないのであろう。
わたくしを黄泉の国に招いておる曇天の空に漂う白き花々 蝶人