蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

パスカル・ボニザール監督の「アガサ・クリスティ 華麗なるアリバイ」を観て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.445バガテル-そんな私のここだけの話op.165

 

制作は2008年とわりと最近のフランス映画だが、ミューミューとランベール・ウイルソンが出演していた。クリストファーではないがクリストファー・ランベールという紛らわしい名前のフランス人俳優がいたが、映画プロデューサーの江尻京子さんが日本の窓口になっていて彼をどこかのCMに使えないか、などと話をしていた頃が懐かしい。

 

ある日新橋のTCCで(故人となった淀川長治さんやおすぎとピーコなぞもいた)なんかの映画の試写を見ていると、突然江尻さんがやって来て、「いま税務署が来ているからちょっと逃げてきたの」と笑っていたが、私も品川の税関とトラブルを起こしていた頃だったのでおかしかった。

 

彼女はとても親切な人で、当時サントリーにいてホールの企画を担当していた吉村嘉彦氏など色々な人を紹介してくれた恩人だったが、なにもお返しが出来ないうちに突然幽明境を異にされてしまった。彼女の事務所は六本木の明治屋のビルの中にあって確かこの近くには秋山正太郎さんの事務所もあったが、千駄ヶ谷小学校の近所で咲いていた薔薇を地べたに座り込んで撮影していた秋山さんも故人となられた。

 

と、ついつい昔話をしてしまったが、茫茫二十年を経て本作で見るランベール選手がいつのまにか中年のオジサンになり、作中で果敢なくなってしまったのも気の毒であった。

 

 

珍しく笑いながらバラエティ見る妻の横顔見れば心慰む 蝶人