蝶人戯画録

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木下恵介監督の「二十四の瞳」を観て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.448

 

 

最近内外の映画はデジタル・リマスターを施されることによって格段に見やすく聴きとりやすくなったが、本作もその恩恵に浴している。

 

この映画は壷井栄原作の歴史的悲戦厭戦映画などとレッテルを張るよりも全篇文部省唱歌オンパレードという珍しい音楽映画なので、子供たちによる「七つの子」とか「仰げば尊し」などの合唱がよく聴こえるようになったのがよろこばしい。全体をつうじてすこし歌い過ぎという嫌いもあるが。

 

蛇足ながら「二十四の瞳」とはいうが、教え子一二名のうち戦死したのが五名、のこり七名のうち男子ひとりは失明したために残ったのはわずか「十二の瞳」になってしまった。

 

若き日にとった杵柄を齢老いてまたつかみとり、教え子たちから贈られた自転車にまたがって降りしきる雨をものともせずいっさんに分教場にむかう女教師。ラストの右から左への移動撮影が美しい。 

 

蛇蛇足ながら、この度の自民党政権がめざす改憲安直参戦のモードが高まれば、またぞろ多くの若者、のみならず成人男女が戦場に送り込まれるのだろう。戦争とは人殺しである。私は(その時がきてみないと分からないがいまのところ)人を殺すよりはそれこそかの山背大兄王のように自虐的にむざむざと殺されるほうを選びたい。

 

それは少なくともおのれは死地に飛び込む気もない人たちが、人殺しをしたくない若者たちをもっともらしいウオーゲーム的発想で左団扇で死線に送り込もうとする愚だけは犯したくないからである。 

 

 

国益国益と騒いでいるがいったいどういう国のどいつのための利益なんだ 蝶人