蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

アンソニー・マン監督の「エル・シド」を見て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.473

 

この映画は今までにたぶん3回は見たと思うのだが、いつも初めてのようなつもりで見物してしまう。私のボケが激烈に進行しているせいだ。

 

途中で海岸線の右奥にそびえる城塞が出てきて、「おや、これはどこかで見たことがあるぞ」という気持ちになるのだが、それでも「そう思うのは私が夢の中でいつか見た光景に似ているからなのだ」と思いなおし、なおも手に汗握って鑑賞しているうちに、突如大団円がやってきて、イスパニアの英雄「エル・シド」は瀕死の重傷を負いながらも白衣の騎士となって単駆敵陣に殺到する。さながら頭が狂っていないドン・キホーテのように。

 

さうするてえと、「この瞬間からエル・シドは歴史から伝説になった」という超カッコイイナレーションが入り、白馬に跨った鉄仮面の騎士は青い空と青い海原をバックに全速力で疾駆しながら画面の左隅に消え去ってゆく。

 

そのいまや伝説と化した英雄の雄姿を涙ながらにかつ誇らしげに見送る愛妻ソフィアローレンと双子の娘の姿! ここまでしっかり記録したからにはもう絶対に忘れまいぞ。やるまいぞ、やるまいぞ。

 

 

交尾ちうの恥ずかしき姿追うキャメラ秘事暴かれしパンダは哀し 蝶人