蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2013年水無月蝶人花鳥風月狂歌三昧

f:id:kawaiimuku:20130618103506j:plain

 

ある晴れた日に 第134回

 

 

またしても世界最強最美の音楽が鳴り響く六月一日横浜能楽堂

 

アリが10匹でありがとう

 

私は所謂一人の人生マンである。

 

1111」という車体番号は嫌みだ。

 

「一旦辞するに当たり誠に感謝します」と妻に遺言せしは書家杉岡華邨

 

ほんたうはアフリカの児が食べるべき二つ目のパンを我は喰ふなり 

 

武器を売り奴隷を売るとも己は売らぬ砂漠の商人アルチュール・ランボー

 

神社裏のわれのみぞ知るイワタバコ根こそぎ取られて跡かたもなし

 

短歌とは全三幕のオペラにて「序破急」をもてわが魂を歌う

 

飛び去ってまた立ち戻るアカタテハ夕焼け富士がじっと見ている

 

遥々と尋ねてみれば更地なりわれら二人が四人となりしその場所

 

若冲金閣寺の水墨画に描きたる四方竹を斬るな農夫よ

 

なーるほどワイシャツに胸ポケットが無くってもどうってことないんだと胸撫でる

 

芸術家は霞を食べるしかないのだがその霞がどこにもないという 

 

フォロワーをあまた従えフォローゼロ哀れなるかな唯我独尊有名人ども

 

新聞の週刊誌広告見ておれば世の中が分かったようになる不思議

 

ハイドンの出だしの一撃に脳天が打ち砕かれしはいつの日か いざさらばわが青春の東京カルテットよ

 

ぐわんぐわんと鐘が鳴る 誰が為に鐘は鳴ると問うなかれ そはそなたの政権への弔鐘なり 

 

新宿で『泥棒日記』観たその足で紀伊国屋のジュネ盗みし昔もありき

 

SMも蝶も聖書も小説も故郷の「火星社書店」にて学びたり

 

ついにゆくその日のために一挺の拳銃と二発の銃弾を我に与えよ

 

「たり」よりも「おり」がよろしと言われたり厳父山田孝雄の眼光をもて

 

ひたぶるに過ぎにぞ過ぎて夕暮れの泉のほとりにたたずむ二人

 

今宵また我が家のチャイムを鳴らすのはおそらく風の又三郎ならむ

 

ありとある木に番号が振られたる霊園の道を歩みたり

 

 

ケネディとカラスが語る薔薇の園

 

じぇじぇと呟きながら今朝の夏

 

夏山を裾をからげてすたすた坊主 

 

つばくらめ五軒に一軒の空き家かな

 

芸術家は霞を食べるしかないのだがその霞がどこにもないという

 

じぇじぇじぇじぇすぐにも廃る言葉なれば今日一度だけ使ってみるべし

 

老人にひかりあれとや初蛍

 

蛍狩り見知らぬ人と語りけり

 

水無月や「熊野」の鼓は荒あらし

 

万緑の奥に潜むか暗黒物質

 

春の朝夢の続きに春樹読む

 

鎌倉や薔薇病みゆく夕べかな

 

蛍狩り君の手を取りどこまでも

 

子が呉れし深紅のパンツや衣更え

 

見てる間に心変わりか七変化

 

ザーメンと比べて過ぎぬ栗の花

 

星と見え生霊と見えて蛍かな

 

星光り蛍も舞いたりスーパームーン

 

交尾ちうの恥ずかしき姿追うキャメラ秘事暴かれしパンダは哀し

 

母上の身まかりし日にふるさとの丹波の山に舞ひしギフチョウ

 

宇宙にも存在するとひとはいうわが心底の暗黒物質 

 

わが心を流るる毒素今日もまたおのれを殺し世界を殺す 

 

泣きながら娘は駅へ走りたり限りなく祖父小太郎を憎悪しながら

 

 

ケネディとマリリン・モンローが揺れている午後四時半の墓地のバラ園 蝶人