蝶人戯画録

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ビレ・アウグスト監督の「マンデラの名もなき看守」をみて

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.551

 

ネルソン・マンデラは30年近く牢獄に入れられていたが、そのかんよくも殺されなかったものだ。南アの悪名高きアパルトヘイト政策を解消させるために生涯に亘って闘い続けたマンデラはもちろん偉大だが、強権保守政治家のボタ大統領の後を継いでマンデラを釈放し、民族和解路線へ踏み出したデクラーク大統領こそは、時代遅れの頑迷なる無法状態に終止符を打った真の功労者ではないだろうか。

 

そんな政治的大転換を背景に、この映画ではマンデラに対して終始好意的でありつつも、彼の息子や戦友の死に責任があったであろう1人の看守の悩み多き生涯を辿っている。

 

いつの時代も独裁的な権力の主流に棹さすことはたやすく、いささかでも歯向かうことは命懸けの難事業であることをこの映画は教えてくれる。

 

 

母の娘であることを誇りに思います。ヒカルの一言に以て瞑すべし藤圭子 蝶人