蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

アンソニー・ハーヴェイ監督の「冬のライオン」をみて

f:id:kawaiimuku:20130625083027j:plain

 

 

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.552

 

ピーター・オートゥールの老いたるヘンリー王とキャサリン・ヘプバーンのやはり老いたる王妃が、3人の息子の王権相続と若い愛人を巡って知恵の限りを巡らし、愛憎の限りを尽くし、火花を散らして戦う政治人世映画の傑作です。

 

男も女も歳をとれば気力体力容色も次第に衰えて老醜無惨となり果てるは已むを得ざる仕儀であるが、しかし手塩をかけて育てたはずの息子たちが、帯に短し襷に長しで、いずれもイングランドの王にふさわしくない碌で無しばかりと知った時の王の失意と落胆はいかばかりであったろう。

 

王の絶対権力に歯向かい続けるので孤塔に幽閉されている王妃とその王妃しか心のよりどころがないと知った「冬のライオン」のごとき傷心の王が、名残を惜しみながら別れを告げるラストは感銘深いものがある。

 

 

笑うにも値せぬ由無き事どもを無二無三に笑っているよ「笑っていいとも」 蝶人