蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

チャップリン監督の「黄金狂時代」をみて

 

 

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.560

 

食うに困って靴を食うシーン、恋人に見せようとしたフォーク2本を使ってのダンスなど、チャップリン得意中の得意技がきらめく素晴らしい喜劇映画であるが、このように音楽やナレーションを入れる前のトーキー時代のままの方がもっと素晴らしかった。

 

彼の強烈な演技とお笑いがあれば、ほかの要素は無用どころか、その本来の鑑賞の妨げになるのである。

 

ところで波瀾万丈の大冒険を命からがら切り抜けて見事百万長者になったチャップリンが、どうして約束通り恋人のいる酒場に駆けつかないで、アラスカを脱出する客船に乗ってしまうのか私には不可解なプロットです。

 

その同じ船に彼女が乗っていたから思いがけない邂逅という設定になり、ハッピーエンドで終わることができたのだが、この主人公はずいぶん薄情な奴だと思うのですが。

 

 

元部下の突然の死よりも哀しきはその通夜の知らせ誰からも無きこと 蝶人